エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「それに、氷室さんに関しては……私、救われてるんです」
「救われてる? 氷室にか?」
信じられないとでも言いたそうに聞く四宮さんに、おかしくなって笑ってから話す。
「小学五年生の頃、クラスで仲間外れにされたことがあったんです。理由は……大したものではなかったんですけど――」
あの頃の教室は独特で、些細なきっかけで誰でも仲間外れの標的になりえたんだと今はわかる。
そして周りは標的を自分にされたくないからいじめる側に同調する。どうしようもなくくだらなかった。
でも、学校生活の中では友達がすべてだ。教室が世界だ。
その頃の私には、クラス中から無視されるという事態がショックで悲しくてたまらなかった。
靴箱に入っていた紙に書かれた〝学校くんな〟の文字も、すれ違いざまに言われた〝頭おかしいよね〟というクスクス笑う声も、大げさではなく私の世界を真っ暗にした。
しばらくは我慢したけれど、そのうちに感情がたかぶりそれが爆発したのが授業参観の時。
道徳で取り上げたのは人種差別について。その途中で意見を求められた主犯格のいじめっ子は大きな声で言った。
『でもそういうのって、される側が結局ムカつく態度とってるんだと思いまーす。なんか目につくっていうかぁ。どっかの誰かさんみたいに』
親が見ている中でも堂々とそんなことを言えてしまうこの子相手には、私がなにを言ったところで伝わらないんだと思った。
クスクスと笑っているのはそのグループだけで、他の子も先生もみんな戸惑っている。今は授業参観だし、問題を起こすのはまずいと頭ではわかっていたのに……。
気付けば、その子の机の前に立っていた。