エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
『ムカつくから何しても許されるなんてことないと思う。あと、私は〝誰かさん〟じゃない。名前、知らなかった? もう一年近く同じクラスで、散々私の持ち物に色々してきたのに? 全部、ムカつくからっていう理由だけでやってきたなら、明日から私も同じことしていい? ムカつくから』
私の静かな怒りに、教室は騒然となり、当然授業参観に来ていた私の母親からは帰宅後どういうことか聞かれた。
『クラスの子とうまくいってないの? ごめんね、お母さん全然気付けなくて……いつから? 原因は?』
『原因はない。……でも少し前までそうだったってだけで、もう、ほとんどなにもされてないから大丈夫』
お母さんには、なんとなく言えなかった。話すととてもとても深刻な問題とされてしまう気がして嫌だった。
それに、お母さんに自分を責めるようなこともしてほしくなかったんだと思う。
そんなとき、近所の公園でひとりでいるところを氷室さんに声をかけられた。
『小学生の女の子がひとりでいたら危ないヤツに声かけられちゃうぞー』
学ランに身を包んだ氷室さんこそ、一瞬〝危ないヤツ〟かと身構えたのは内緒だ。
お隣さんという認識しかなかったから最初は警戒もしたけれど、その頃から、軽くいい加減な雰囲気だった氷室さん相手だと私も自然と肩の力が抜け……気づけば悩み事が口をついていた。