エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「四宮さん、ケーキ全然食べてませんけど、もしかして嫌いでしたか? さっき、あまり得意じゃないって言ってましたもんね」
四宮さんは私にチョコプレートをよこしただけで、ケーキをひと口も食べていない。
一方の私のお皿はもう空だった。
「嫌いってほどでもないが……そうだな。得意ではない。せっかく用意してもらったのに悪いな」
申し訳なさそうに言われ、慌てて首を振る。
「いえ! 用意したのは氷室さんですし。それに私は好きですから、あまっても問題ありません」
「これも食べてもらっていいか? 手はつけていない」
「はい。喜んでいただきます」
四宮さんからお皿を受け取り、フォークを持つ。
氷室さんが買ってきたホールケーキはスタンダードなショートケーキだけど、いちごがふんだんにあしらわれていてとても豪華だ。
クリームの味もしつこくなく上品な甘さでおいしい。
私はもうこれが二切目だけど、あと数切れは食べられそうなおいしさだ。
「こんなにおいしいケーキ独り占めしちゃって、なんだか申し訳ないです」
ひと口分をフォークに載せながら言う。
すると、四宮さんはなにを思ったのか、フォークを握った私の手を上から覆った。
手を掴まれたことに驚いている間に、四宮さんは私の手ごと自分の方へと持って行き、ケーキを口に運ぶ。
四宮さんが、口の端にわずかについたクリームを舌先でとるようすをただ眺め……そのうちにハッとした。