エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「あの、ケーキ苦手なんじゃ……」
「これくらいなら問題ない。……うん。甘さ控えめで悪くない」
「そうですか。よかったです……」
おいしく食べられたのはよかった。四宮さんの誕生日ケーキだし、氷室さんもきっと喜ぶ……とも思うものの、頭の中は普通にされた間接キスだとか、なぜか未だ握られたままの手だとかでいっぱいだった。
しかも四宮さんが見つめてくるから、どうすればいいのかがわからず、身動きが取れない。
この状況になにか意味はあるのだろうか……と必死に考えを巡らせていると、そんな私を尚もじっと見つめたままの四宮さんが言う。
「俺の贈った服を着てこんな風に誕生日を祝われたら勘違いしそうなんだが」
「え……勘違い、ですか?」
今日着ている紺色のワンピースは、お見合いのときに四宮さんが買ってくれたものだ。
袖が控えめなパフスリーブになっている上品な形で、首元はVネック。ウエスト部分にはワンピースと生地が同じベルトがついていて、前でリボン結びするととても可愛い。
あの日、四宮さんが案内してくれたお店は値段設定が高めだった。普段ならまず手を伸ばさない値段の服ばかりでどうしようと内心焦っていた私を見かねて、四宮さんが選んでくれたのがこのワンピースだった。