エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
仕事で忙しいに決まっているのに、私のことを思い出し時間まで取ろうとしてくれている。
私も四宮さんを恋愛の意味で好きかどうかは別にしても、そこに、嬉しさを感じないはずがなかった。
ふと、誕生日パーティーでキスされた手の甲に視線が留まる。
手の甲にキスされたのは、初めてだった。
あの日の主役は四宮さんだったのに……。あれでは私がプリンセスにでもされたようだ……と考えた途端顔がカッと熱を持ち、テーブルに突っ伏す。
海外では挨拶程度の触れあいだとしても、私からしたらその後にされた告白も含め大事件だった。
四宮さんは、私が好きだと言っていた。
その気持ちを疑うわけではないけれど、四宮さんの立場を知っているだけに〝そうなんですね。ありがとうございます〟とすんなり納得することもできず、気持ちがガタガタとしている。
まるで、形の合わないピースが私の中に迷い込んでしまったようだった。収まる場所のないピースが彷徨い落ち着かない。
「お疲れ様ー。あれ、鈴奈ちゃん、どうした?」
ひとりきりだった休憩室に元気に現れたのは浅尾さんだった。
咄嗟に上半身を起こし「あ、いえ。なんでもありません」と答え手櫛で髪を整える。
恥ずかしいところを見られてひとり戸惑っていると、そんな私の様子を見た浅尾さんが斜め前の椅子を引いた。