エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「もしかして思いつめてた? 塚田さんでしょ? そろそろ店長に相談してもいいと思うよ。それが結果的に契約終了に繋がったとしても、もう自業自得だよ。この店内で塚田さんの味方につく人なんていないよ」
私がテーブルに突っ伏していた理由を塚田さんだと勘違いした浅尾さんに思いがけない励ましの言葉を言われ、慌てて首を振った。
「あ、いえ。違うんです」
「あれ? 違うの? 鈴奈ちゃんの悩みの種のぶっちぎり一位は塚田さんだと思ってた」
「えっと、違くはないんですけど……」
そう言われてしまうとそうだ。
私がもやもやしている一番の理由はぶっちぎりで塚田さんで、他の追随を許さない。
浅尾さんに言われて気づいたけれど、そういえば昼休みに塚田さんのこと以外で頭がいっぱいだったのなんて、彼女が派遣社員としてうちにきてから初めてかもしれない。
約十ヵ月、私は塚田さんで頭がいっぱい状態なのか……と呆れて笑みをこぼす。
食べ終わったままにしてあったお弁当箱をしまいながら「今は違うことを考えていました」と答えると、浅尾さんは菓子パンの袋を開けながらにやにやとした顔で私を見た。
「なになに? 恋とかそういう話? 聞きたいな」