エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「あとひとつ聞いておく。誰にでも触れさせるわけでもないな?」
そんなの、私の性格を知っていれば答えなんてわかりきっているだろう。
四宮さんは頭の回転もいいし、わざわざ確認する必要もないように思えた。
それでも私に答えさせる四宮さんには何かしら思うことがあるのかもしれないと思い……恥ずかしくなりながらもコクンとひとつうなずいた。
四宮さんが特別だと言ってしまったようで、目が泳ぐ。
四宮さんのことは、人としても男性としても好意的に思っている。こんなに素敵な男性は他にいないとも。
けれど、立場だとか色々考えると告白の答えは出せていないのが現状だ。
だからもしもこの流れで返事を催促されたらどう答えればいいのだろう……と心配していたのだけれど、四宮さんは満足そうに口の端を上げると私に触れていた手をそっと離した。
「それが聞ければ十分だ。つまらない嫉妬にかられて悪かった」
手が離れたことに、ホッとすればいいのか残念に思えばいいのか半々の自分に戸惑いながらも、「嫉妬……?」と声をもらした時。
「電話か?」
私の携帯が鳴りだした。
「あ、すみません」
バッグから取り出した携帯の画面が表示していたのは氷室さんの名前で……もう一度「すみません」と言ってから電話をとると、すぐに向こう側から声が聞こえた。