エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
最寄り駅からマンションまでは、歩けば十分程度なのにこの時間帯は交通量が多いらしく車でも同じくらいか、それ以上の時間がかかった。
「あの、私、話しておきたいことがあって」
マンションの駐車場に停車したところで、意を決して話しかける。
サイドブレーキをかけ、ギアをパーキングに入れた四宮さんはエンジンを切らずに私の話の続きを待ってくれていた。
「先日の話なんですけど……四宮さんはハキハキした女性と付き合ってきたみたいですけど、私はたぶん、色んなことをすぐに言葉にはできないと思うんです。我慢……とは違う気がするんですけど、まだ言うタイミングじゃないかなとか考えて、それは傍から見たらきっとじれったく感じると思うんです」
塚田さんとのことなんてまさにそうだ。
きっと、他の社員はいつまで放っておくんだと呆れている。もしかしたらイライラしている人だっているかもしれない。
「タイミングを計っているうちにチャンスを逃して、溜め込むしかできなくなって、結局変な時に爆発したりして面倒なことになったり……きっと四宮さんが好んできた女性のタイプとは真逆です」
喉が詰まるような感覚があった。
自分が四宮さんの求めているタイプではないと自己申告するのは……自分のダメな部分をカミングアウトするのは、正直勇気がいる。
それでも黙っているわけにはいかないと思ったのは、四宮さんの告白が冗談ではないと知っているからだった。
真面目な顔で聞いてくれている四宮さんに続ける。