エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
十一月に入ると、キャンペーンが始まり一気に忙しくなった。
〝新車成約五大得点〟と銘打ったキャンペーンは、新車を契約してくださったお客様には、カーナビ、初回点検時の窓ガラスコーティング、スタッドレスタイヤの割引券、お米五キロ、近所にあるケーキバイキング店の招待券がサービスとなる、お店としても力を入れているキャンペーンのひとつだ。
休日はもちろん、平日も他の月以上のお客様が来店するため、キャンペーンを行っている間は受付業務の手伝いに営業がふたり補佐としてつくほどに忙しい。
キャンペーンで来店されたお客様の車の誘導やお茶出し、簡単な聞き取りの合間に、通常の点検のお客様のご案内、電話対応、店内の清掃……とここ数日は目が回りそうだった。
業種関係なく景気がいいとは言えない中、待ち時間が発生するほどのお客様が見えるのはとてもありがたいことだとは思いつつも、この調子で今月を乗り越えられるのだろうかという不安がすでに頭の中にチラチラと顔を出していた。
浅尾さんがよく言っている『仕事はなんだって体力勝負だよ』という言葉が身に染みる。
十九時五分に最後のお客様を送り出し、駐車場のチェーンと店舗のシャッターを閉める。
ガランとしている接客スペースを見て、そういえば今日ここが無人だった時間帯はなかった気がする……と思いながら、テーブルを整頓し布巾で拭いていく。
キッズコーナーも片付け、パンフレットの補充確認を終えたところでやっと受付の席に戻ると、座っていた塚田さんが私を見て鼻で笑った。