エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


「藤崎さん、今日、これ見よがしに忙しそうにしてましたよね。〝私大変〟アピールですか? あざとすぎてひくんですけど。っていうかそこまでの仕事量じゃないのに切羽詰まっちゃうって、要領悪すぎでしょ。キャパが相当ないんですねー」

一瞬、なにを言われたのかがわからなかった。

けれど、ニヤニヤして私の反応を楽しんでいるような態度から、今のが嫌味だったのだと気付き……言われた言葉の意味を理解すると同時に一気に頭に血がのぼった。

塚田さんの嫌味は、今に始まったことじゃない。
今までだって彼女の機嫌次第ではこういう顔でなにかを言われたりということはあったし、その度に思うところはあってもグッと耐えてきた。

けれど……。
疲れていたこともあり、それに今まで溜まっていた分もあり、つい苛立った感情に背中を押されるまま口を開いてしまった。

「今日はお客様が多くて忙しかったから大変だった。塚田さんだって店内にいたんだから、嘘のアピールじゃなくて実際そうだったってわかるよね。みんなが忙しくて走り回っている中、ずっとそこに座ったままネイル越しに眺めてたじゃない」

『鈴は本気で怒ると淡々と話すから怖いんだよな』と苦笑いを浮かべる氷室さんが頭の中に浮かんでいた。

塚田さんが「は?」と眉を寄せたのはわかったけれど、止まらなかった。


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