花火大会 〜14年目の永遠の誓い 番外編(4)〜
まだ夕方の4時過ぎ。
ホテルを一歩出るとムワッとした熱気に包まれた。これは、ハルには長くは無理だ。ピンポイントでやりたいことやって、サッサと戻るが良し、だ。
「ハル、何見たい?」
オレがハルの手を取ると、志穂がまるでオレに対抗するかのようにハルの反対の手を取った。
「ねえ、陽菜、何か食べる?」
ハルが困ったように、小首を傾げる。
オレは、志穂対策に羽鳥先輩を呼ばなかったのを若干後悔。
先輩がいれば、ダブルデートの体裁が整ったのに。
ハルが歩きにくそうだったので、仕方なく、オレはハルの手を離した。
「しーちゃん、6時から、少し早めのお夕飯なの」
「あれ? 露店で買い食いじゃないの?」
「うん。……ごめんね。言ってなかったね。……えっと、和食なんだけど大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。何でも食べられるよ」
志穂は元気に答えた。
「でも、どこで食べるの? 部屋でお弁当?」
「ううん。ホテルの中のレストラン。美味しいよ?」
「ふふ。じゃあ、楽しみにしているね」
「うん」
楽しそうに志穂と話すハルの髪飾りが風に揺れる。
その笑顔が可愛くて、思わず手に持ったカメラで一枚。
うん。やっぱり、コンデジやスマホに比べたら雲泥の差。写りがいい。
ハルの可愛らしさがモニターに凝縮されている。
これ、オレも買おうかな?
「じゃあさ、ご飯食べなくて良いんだったら、時間あるから射的とか金魚すくいとかして遊ぼっか」
志穂は嬉しそうにハルの手を握り直して、露店を物色し始めた。
花火開始にはまだ時間があるけど、川沿いの道路はもう人混みができている。
明かりはまだ灯っていないけど提灯が揺れ、露店も色々出ていて、浴衣姿の人も多く、お祭り気分満載だ。