花火大会 〜14年目の永遠の誓い 番外編(4)〜
「ヤッホー! 斎藤くんも来てたんだね~」
陽菜の向こうから、志穂も出てきて手を振ると、斎藤はまた目を点にした。
「え? なに? 寺本も浴衣!?」
「そうそう。どう? 似合う~?」
「……や、馬子にも衣装?」
どっかで習ったその言葉、今使う!?
オレがぷっと吹き出して、
「女の子に見えるよな?」
と言うと、志穂が持っていた巾着をオレの頭、続けて斎藤の頭にぶつけた。
「失礼な」
「ってか、おまえ、浴衣着て暴力ふるうなって。だから、馬子にも……ああ、分かった! ごめんって!」
オレの言葉に志穂が下駄を履いた足を持ち上げたもんだから、たまらない。
慌てて謝ると、志穂は腰に手を当ててぷうっと頬を膨らませた。
志穂もハルのばあちゃんに着付けてもらって、ついでに髪も可愛く結ってもらっていた。
普段のボーイッシュな志穂から、この姿を想像するのは難しいだろう。
オレからすると、普段のハルと浴衣姿のハルのギャップより、普段の志穂と今日の志穂のギャップの方が激しく大きい。
思わずからかってしまったのも仕方ないだろう……と言いたかったが、オレたちの様子を横で見ていたハルは、オレの袖を引いた。
「カナ、女の子にそんな事言っちゃダメだよ?」
「……ゴメンナサイ」
オレたちのやり取りを見て、斎藤の友人たちはプッと吹き出した。