花火大会 〜14年目の永遠の誓い 番外編(4)〜
「ハール。こんなところで寝たら、風邪引くよ」
花火の後、交通規制が切れる十時から更に三十分後、ホテルの出入り口前で志穂をお母さんに引き渡した。
泊って行けばいいのにと思うけど、「十時なんて宵の内でしょ」と言われると、ハルのじいちゃん、ばあちゃんと一緒と言うのは落ち着かないのかもと強くは誘いそびれた。
そして、志穂を送って部屋に戻ると、さっきまでは眠そうながらも起きていたハルが、ソファでウトウト居眠りをしていた。
オレの帰りを待っていたらしいばあちゃんが、ハルに声をかける。
「陽菜、お部屋に行きましょう?」
「……ん」
普段は九時には寝るハル。
今日も花火が終わった午後八時には、志穂がいるのにと遠慮するのを押し切って、先にお風呂に入れて、寝る準備は万端だった。
それでも、志穂がいる間はと頑張って起きていた。
昨日まで学校だったし、疲れていないはずがない。
「ばあちゃん、オレ、寝室まで運ぶから、起こさないであげて」
「歯磨きは……」
「大丈夫。終わってる!」
オレが速攻で答えると、じいちゃんが「さすがだね、カナくん」と笑った。
「ハル。ベッドに行こうね」
ハルの背に腕を回しながら、そう声をかけると、ハルは「ん」と身じろぎして、オレの胸に頭をもたせかけた。
その仕草が可愛くて、思わず笑顔が漏れる。
「カナくん、こっちの部屋に運んでくれるかい?」
「はい。えっと、オレも同じ部屋でいい?」
そう言うと、じいちゃんは目を丸くし、ばあちゃんが
「いい訳ないでしょう」
と苦笑い。
「だよねー」
そう答えながら、ツインルームの手前側のベッドにハルを寝かせる。
「今日は私が一緒に寝るわ」
ばあちゃんはハルの布団をそっと直してから、ハルの髪を優しい手つきで整えた。