花火大会 〜14年目の永遠の誓い 番外編(4)〜
「ハル、体調悪そう?」
この部屋は3ベッドルームだから、じいちゃんとばあちゃんが一部屋、ハルとオレが一人ずつ寝ても部屋は足りる。
普段、一人で寝ているハル。
だけど、体調が悪い時は必ず誰かが側で寝る。
疲れてはいるけど、元気そうに見えたんだけど……。
「慣れない場所ですからね。夜中に目が覚めた時、お手洗いの場所も分からないと辛いでしょう?」
「そっか。でも、それじゃあ、ばあちゃんも眠れないんじゃ……?」
「年寄りは眠りが浅いから大丈夫ですよ。陽菜が起き出したら、多分パッと目が覚めるから」
ばあちゃんはクスリと笑って、オレの背を押した。
「さあさあ、叶太さんもお風呂を済ませて寝なくてはね」
「待って待って、忘れもの。ハルにおやすみのキスをしなきゃ〜」
ばあちゃんを振り切ってハルの元に屈み込む。
「ハル」
起こさないように小さな声でハルを呼ぶ。
いつもと違うホテルのベッドで、寝息を立ててハルは眠る。
少し疲れているかな。顔色が今一つよくない気がする。
だけど今日は、じいちゃんが一緒だから安心だ。ハルの病気のこともよく分かってるし、密かに診察道具一式を持ち込んでいる。
ハルの額に手をやり、柔らかな髪の毛を避ける。そのまま、そっとハルのおでこにキスを落とした。
うん。熱もない。
「おやすみ、ハル。ゆっくり休んでね。また明日」
俺がハルにおやすみの挨拶をするのを、ばあちゃんは笑いながら待っていてくれた。
「本当に叶太さんは陽菜が好きね」
一緒に部屋を出たところで、ばあちゃんは言った。
「もちろん! 心から愛してる」
「ええ、ええ。声からも表情からも溢れ出していますよ」
「ホント!?」
思わず顔がにやける。
ハルを大好きな事、隠す気なんてサラサラない。
リビングで待っていたじいちゃんが、オレたちの話を小耳に挟んで小さく吹き出した。
(完)