瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
こっそりと裏口から入ろうとしたのだけど,先輩メイドさんたちが笑いながら歩いてきたため,慌てて隠れる。
『陛下って本当イケメンよねー!』
『私があと6歳くらい若かったら,プロポーズしてたかもしれないわ!』
甲高い笑い声を響かせながら,2人は王宮の裏側に留まる。
あ〜あ,どうしよう。
私の部屋に続く裏道は,先輩メイドさん達の目の前を横切り,複雑な地形を進まなければならない。
私が急に突き進んで行ったら,先輩メイドさん達はびっくりするだろうし……
それに,裏道はあまり知られたくない。
………しょうがない。
中から普通に入るしかないか。