瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


赤ちゃん口調でそう尋ねられ,私は怒ったような声を出す。

「こう見えてもメイドですぅー!」

……ヘルは,嘘をついている。

普通の人は気づかないかもしれない,小さな違和感。

でも私にはわかった。

私と同じ,薄っぺらい笑みを浮かべていたから。

私よりも,作り笑いが遥かにうまかった。

まさか,私の正体がバレたわけでは無いよね?

とにかくヘルは,何かを隠している。

でも,私は気づかないフリをした。

私だって嘘をついているんだし。

逆に深く聞いてしまうと,大変なことになるような不安がどこかにあった。
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