瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


「それじゃぁ,これ,ありがとなー」

ヘルがこちらにタオルを投げてくる。

「俺だったから良かったものの,陛下にぶっかけてたらお前完全にクビだったな。」

どうやらヘルはあまり身分は高くないらしい。

私は心の奥でほっと息をついた。

「それじゃぁな〜」

出会った時と同じように風を切るように走っていくヘル。

……ヘルには注意した方がいいかもしれない。

そんなことをぼんやり思いながら,私はヘルが頼もしく思えた。

おかしいと思うけど,ヘルにはどこか私に協力してくれそうな,力強い印象があった。

私はまたバケツを持って,中身はカラなのに,慎重に持って歩いた。
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