瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
それから10日後。
私もだいぶ1階の窓拭きには慣れてきた。
それでもやっぱりきついものはきつい。
今日もゴシゴシと凍るような手を必死に動かしていると,テールさんが慌ただしく走ってる。
どうしたのだろうと首を傾げていると,ズカズカと私の方に向かって来て,私はそっと水いっぱいのバケツを隣に動かした。
「あのね,アイリスちゃん!
悪いのだけど,これを陛下の部屋に持って行って貰えないかしら。」
私に押し付けるように渡されたそれは透明なビンだった。
なにか液体が入ってそうだけど,水よりも濁っている。
なんだか怪しげな雰囲気を醸し出している。
まあそんなこと言っても,テールさんに頼まれたのだから仕方ない。
それに私はその時少し興奮状態だった。
やっと回ってきた運。