瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
それに私は少なからず喜びを覚えていたはずだ。
私がメイドになったのは,フェンに近づけると思ったから。
そして私の予想通りにフェンに近づくチャンスができた。
この瓶を持っていくわずかな時間のだけとはいえ,やっと話すチャンスができたのだ。
この状況で興奮しない人は,もう心がぶっ壊れていると思う。
私は小走りで階段を上り,豪華すぎて落ち着かない廊下を歩く。
そして,何部屋か通り過ぎ,とてつもなく大きな扉を瞳に映す。
「ぅわあ……。」
思わず感激の声を出してしまう。
いや,大きすぎじゃない?
この中にいるのはまだ幼い子供なのだと思うと,なんだか冷や汗が出てくる。
(何歳かは知らないけれど,私よりも背が低いのだから,多分年下だと思う。)