瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
「残念です。実は私,作法が苦手でして……。
陛下に教えて頂けるのでは無いかと期待をしていたのですが,甘かったようですね。
まさか,陛下は作法が出来なかったなんて私思いもよらなくて。
それに陛下はお忙しいようですし。
大変申し訳ございませんでした。」
律儀に頭を下げる。
陛下とはいえ,相手はまだ子供だ。
礼儀正しくしつつ,相手を蔑む。
そして,一気に畳み掛けるように喋るのも大事!
とにかく相手に考えたり冷静になる隙を与えないこと。
そうすれば,子供で負けず嫌いならば,噛み付いてくるもの。
例えその時は了承してくれなくても,相手の記憶にはきっちり記憶されるのだから。
そして,ほんの少しの真実味を持った嘘をつくことも大事なのだ。
「あの,私,実は,陛下が好きなのです。」
陛下はもう呆れてものも言えない状態になっている。
「ずっと,ずっと憧れていまして…。
メイドとしてこの城に来てしまう程に,好きなのです。」