瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
やっぱりダメかぁ…。
少しため息を吐く。
でも負けず嫌いの子供なんだから,少しは印象に残っただろう。
今日はもうそれだけでいいや。
地雷を踏まない程度によく頑張ったと思う。
なんだか清々しい気分だった。
少しでも陛下を驚かせて,なんだか嬉しかった。
こんな私でも,世界は変えられるかもしれないなんて自意識過剰なことを思いながら,内心満更でもなかった。
私の世界は私が主導権を握っている。
私の幸せは私以外の誰にも取らせない。
夕焼けに染まる廊下で,私はほんの少しだけ微笑んでみせた。