瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


人参に似ているが,確かドクニンジンという名前の草だ。

つまり,人参の振りをしているまがつもの。

「俺にピッタリの花だな…。」

そっと触れると,ゴワゴワとした感触が俺の手にまとわりつく。

周りを見ても,美しい花は目には止まらず,代わりに毒のある花しか目につかない。

いつから,花を楽しめなくなってしまったのだろう。

美しい花ほど俺は潰したくなる。

ただ美しいというだけで,何が出来る?

どれだけ美しいものだろうが,いつかは腐り,朽ちてゆく。

強く,誰よりも強くならなければ,大切なものは何一つ守れない。
< 143 / 169 >

この作品をシェア

pagetop