瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


別に,どうでもいい。

俺が心を許す人は,あいつ以外ありえない。

そう思っていた。

というか,思わずにはいられなかった。

なのに…………。

俺はふと振り返る。

すると,アイリスがこっそり庭園に入っているところだった。

さすがに呆れてしまった。

まさか,俺をつけてきたんじゃ……?

それだったら本当にストーカーの部類に入るぞ。

俺が冷めた目で

「おい,」

と声をかけると,肩をものすごくビクつかせた。

……好きとか言って,やっぱり俺が怖いんじゃないか。

俺はアイリスを睨みつけながら

「なぜここにいる?」

と,できるだけ威圧感のある声で言った。
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