瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
俺が不機嫌そうな顔をすると,アイリスは慌てたように口を開く。
「えっと,テールさんに頼まれて……。
つ,つけてきた訳じゃないですよ!!」
身振り手振りで必死に説明するアイリスに少しだけ笑いそうになってしまう。
ものすごくびっくりした。
俺が,誰かのせいで笑うだなんて。
ありえない……。
俺は今まで感情を殺して生きてきた。
俺は感情の制御が出来る数少ない子供だと思い込んでいた。
それなのに……あんな,下級メイドの言動で俺が笑うだと…?
ありえない,今のは,不可抗力だ。
必死に心の中で言い訳を述べると,
「陛下はここにはよくいらっしゃるのですか?」
と,柔らかい笑みを浮かべて質問してきた。
俺は一旦落ち着けと唱えてから威厳を含んだ王の声で返した。