瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


「あぁ,ここは静かだからな。」

ここだけ異世界のように静まり返っている。

表にいれば,自分のすべき事と向き合わなければならなくなるが,ここなら誰も俺を見ない。

たまに使用人が入ってくることがあるが,みんな俺の事が怖いから,失礼しますとだけ言って仕事をしてしまう。

その雰囲気が好きで,俺は朝は必ずここに来る癖がついてしまった。

「じゃあ!私が頑張って掃除しないとですね!」

上り始めた太陽に負けないくらいの笑顔でアイリスは笑った。

……なんで…?

なんで,俺に話しかけるんだ?

なんで,俺に笑いかけるんだ?

なんで,なんで,なんで……?

なんで……俺を,怖がらない?

気づいたら,口にしていた。
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