瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
『好きだから,です。』
誰かにあんなに素直に愛をぶつけられたのは初めてで。
俺は本能に従っていつの間にか逃げてしまっていたのだ。
自分の顔が熱くなっていくのがわかる。
鼓動が,倍になっていくのもわかる。
全身のありとあらゆる熱が沸騰していくのがわかって,俺は必死に首を振った。
いや,違う。
嬉しくなんかない。
ただ,珍しくてびっくりしてしまっただけだ。
色恋なんかに溺れている暇はない。
そもそも,あれはなにかの聞き間違いだ。
俺には俺のやるべきことがある。
あの“約束”を叶えなくてはならない。
守り抜かなくてはならない。