瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


『好きだから,です。』

誰かにあんなに素直に愛をぶつけられたのは初めてで。

俺は本能に従っていつの間にか逃げてしまっていたのだ。

自分の顔が熱くなっていくのがわかる。

鼓動が,倍になっていくのもわかる。

全身のありとあらゆる熱が沸騰していくのがわかって,俺は必死に首を振った。

いや,違う。

嬉しくなんかない。

ただ,珍しくてびっくりしてしまっただけだ。

色恋なんかに溺れている暇はない。

そもそも,あれはなにかの聞き間違いだ。

俺には俺のやるべきことがある。

あの“約束”を叶えなくてはならない。
守り抜かなくてはならない。
< 151 / 169 >

この作品をシェア

pagetop