瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


俺にはあいつ以上に好きなやつなんて出来るはずがない。

……アイリスといると何かおかしくなってしまうだけだ。

アイリス自身が変人すぎるから気になるんだ。

だから,信じるな。思い込むな。

アイリスは俺の事別になんとも思ってないだろう。

俺だってあんな下級メイド,どうだっていい。

……どうだって,いい。

俺の世界はあいつとの約束が叶えられた世界。

そして,1人で誰にも気付かれずに死ねる世界。

そしてその世界にはアイリスは必要ない。

俺はまだほんの少し熱い頬を両手で包んで冷やす。

俺の部屋に朝日が差し込む。

まだまだ,頑張らなければいけない。

でも,あともう少し。
もう少しだけだから。

気合を入れて,俺は朝日に立ち向かうように目を見開いた。
< 152 / 169 >

この作品をシェア

pagetop