瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
「静かに…見つからないようにね?」

息を潜めてゆっくり歩く。

エラが緊張したように,私の後を忍足でついてくる。

「ところで…なんで私はここにいるの…?」

エラが不安げな目で訴えてくる。

無理もない。
エラにとっては未知の領域だろうし…

私は声を潜めて話す。

「えーっと…私,ここのメイドなの。」

「なんで,どうして!?」

驚くエラを嗜めながら,私は笑って話す。

「私,実は貴族の出で,メイドにならないかってお呼ばれしたの。

その…結婚相手もなかなか見つからなかったんだけど,メイドになれば,少しはこの国の王様と仲良くできるかな〜って。」

嘘。そんなことない。

嘘が口からポロポロ溢れていくのに,自分でも驚く。

そんな,ありきたりな理由じゃない。

嘘をついた罪悪感を振り払う為に,私はわざと明るい声を出す。
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