瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
『私,もうダメかもしれない。』

『な,何言ってるんだ!
頼むから,変なこと言わないでくれ!』

『変なことじゃないわ。
わかるよ。もう,私には時間がない。』

『………』

『ねぇ,フェン様‼️
私ね,お願いがあるの!』

いつも以上に明るい声で,俺の目を真っ直ぐに見て言った。

『この世界を守って欲しい。
私ね,この世界が好きなの。
だから…私の代わりに,大切にして!
フェン様が生きたいって思える人と幸せになって!』

俺は,何も答えられなかった。

頷くことも,嫌だと嘆くことも,

–––––俺が生きたいって思える人は君だけなんだと,言えなかった。

そんな自分をずっと憎んでいた。

どうして,本当の気持ちを伝えられなかった?
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