瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


「……ひどい王様だね。」

やっとのことでそう呟けた。
怒りがお腹の中に渦巻く。

エラはそんな私をじっと見てから,

「そうかなぁ。」

と呟いた。

「私は,その王様,実は良い人なんじゃないかなって思ってるよ。」

そんなエラの言葉に,私の怒りは爆発した。

「違うっ!王様は悪い人に決まってる!!
あんな最低なやつ,良い人なわけないっ!」

『お姉様!!』

頭の中で,イアンの声が聞こえる。

悔しい。悔しい。悔しい…!

唇を思いっきり噛むと,血の味がした。
< 52 / 169 >

この作品をシェア

pagetop