瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


私は初めて,心からたくさん笑えた。

でも,幸せは長くは続かない。

ずっと雨が降ることもないし,ずっと晴れ渡ることはない。

幸せは,いつも呆気なく崩れる。

「アイリス!弟が出来たのよ。」

私が城に来てからわずか1年後。

お母様とお父様は,本当に嬉しそうにそう言った。

もちろん,私も嬉しかった。

お父様とお母様には,ずっと感謝していたから,その2人が嬉しそうにしていることは,私にとっても嬉しかった。

でも…

「イアン,こっちにいらっしゃい。」

「イアンは本当に可愛いなぁ。」

私の弟 イアンは,私よりもお父様達に愛されていた。
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