瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


「お願いっ…!お願いっ…!」

何度も何度も,お母様はそう言った。

でも,その願いは叶わず…

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

お父様は,イベリアスリアルに負けた。

お父様の死体には,一度も触れることも,見ることもできなかった。

お母様が,見せられないと判断するくらい,お父様は,ボロボロになって死んだ。

そしてイアンの行方は,わからなくなった。

死んでしまったのだろうと,みんな口々に騒いだ。

国は荒れ果て,私達は,ひっそりと質素な生活をすることになった。

誰にも見つからないように,ひっそりと。

私達は,悲しむ暇もなく働いた。
< 62 / 169 >

この作品をシェア

pagetop