瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
そうやって謝るばかりの日々を何年も過ごしたある日。

私にチャンスがやってきた。

「お母様,どうされたのですか?」

もうほとんど寝たきりのお母様が,私を呼ぶのは珍しかった。

「家事も,仕事も任せてごめんね…。」

そう,すっかり弱りきったお母様が家事や仕事を出来るはずがなく,私がほとんどやっているのだ。

でも,お母様を助けるのも,罪の償いだと思っているから。

「大丈夫です!!」

私は本当に大丈夫そうにそう言って笑った。

「アイリス。」

儚い笑みを浮かべて,お母様は私の名をよんだ。

それに小さな違和感を覚える。

今まで暗く,憔悴していたお母様の瞳が,生力を取り戻したように感じた。

「アイリス,あのね…」
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