瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


私の中のつきものが取れたような気がした。私の中で何かが壊れた気がしたけれど,復讐のことを考えない日はなかった。

イアン達を殺した王様がいけないのだ。

自分をそうやって正当化させて,一時のまどろみに浸る。

私は,正しい。

そう言い聞かせながらも,何か違和感を感じる。

あの日のことは,よく覚えていない。

私がこんなに苦しいのは,夢のせいだけじゃないのかもしれない。

何か大事なことを忘れている気がして,でもそれが分からなくて,私の進もうとしている道があっていない気がして,不安になった。

でも,お母様にあんなに堂々と言ってしまったことは,取り返しはつかない。

チャンスは一度きりなのだ。

これ以上,お母様を悲しませることはできない。

これ以上,悪夢に耐え続けることはできない。

不安だけれど,やるしかないのだ。
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