瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


『アイリス。』

イベリアスリアルへ行く前日。

『これをあげるわ。』

お母様が差し出したのは,小さな木棒のようなものだった。

『これは何でしょうか?』

『そこのボタンを気をつけて押してみなさい。』

確かに,木棒の端っこに丸い小さなボタンがあった。

力を込めて押してみると,シャキンッと幸せには不釣り合いな音を立てて銀色の刃が木棒から出てくる。

刃は思わず見惚れてしまう程に綺麗だった。

窓から覗く月に照らされて,刃が光を発しているように思える。
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