瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


『お母様,これは…?』

『万が一,何かあった時とか…復讐心が抑えきれなくなったときに使いなさい。』

つまり…お母様は王を殺しなさいと言っているのだ。

でも,いくら私が王を憎んでいるからって,殺せるかと言われれば,そんなことはない。

『お母様,私は,弱みを握るくらいしか出来ません。』

そうはっきり言っても,

『念のためよ。』

そう言って,持たないことは許されなくなった。

これを持っていたら,私の良心が傷ついて,何かとんでもないことをしてしまいそうで不安だった。

でも,お母様の願いを断るのは気が引けたから,護身用として持つことにした。

いずれ,この刃物は私のお守りがわりになることは言うまでもない。
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