瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


馬車の前でフリーズしている私をみて,お母様は私を抱きしめる。

『アイリス,大丈夫よ。』

『…うん。』

私は手を振ってお母様とお別れをする。

さようなら,お母様。

私はきっと,生きてここへ帰れない。

でも,最後まで幸せになれるように足掻くから。

帰ってこれたその時は,私に愛を下さい。

『ーーーー!』

行く間際にお母様が何か言った気がしたけれど,よく聞こえなかった。

馬車はゆっくりと動き出し,私の不幸な人生は,ここで第二幕へと移る。
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