瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
私は馬車の窓に体重を預ける。

…どうしてこんなにも復讐をすんなり受け入れられたのだろう?

いくら悪夢から解放される可能性があったとしても,あくまで可能性なのだから。

悪夢から100%解放される可能性があるわけではないのに。

––––––きっと,生きることに疲れてしまったんだ。

私は,生まれた時からいらない子だった。

その後は幸せと言えたが,今となっては思い出したくもない苦い過去。

そして,今は人殺しをしようとしているなんて…

やれやれ,どうやら私の人生には幸せと愛情はない設定らしい。

だから,もう疲れてしまったのだ。

生きたいと,魂が叫ばなくなってしまったから,復讐をすんなり受け入れられたのだろう。
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