瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
私はとりあえず,歩いてみることにした。

誰も助けてくれないことを私は知っているから,とにかく行動しないと。

時間はたっぷりあるし。

すぐに野宿するのはもったいない気がした。

本来なら,ここに着くのは午前6時くらいだったけど,今の時刻は4時15分くらい。

…どこのお店もあいていない。

そりゃそうだよね,と苦笑いをする。

こんな朝方からお店を開いていたら破綻するよ…

諦めがほぼ頂点に立った時,ふと,目の前が明るくなった気がした。

顔を上げると,目の前には小さなカフェが存在していた。

「ええ!」

嘘でしょう?

まさか破綻しようとしている店があるとは!

もしくは,哀れな私に神様がくれたただ一つの祝福だろうか?

とにかく,私にとっては好都合。

可愛らしい雰囲気のカフェだから,危ないお店じゃなさそうだし。

野宿しなくて済みそうな現実に心を躍らせながら私は躊躇なく入る。
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