瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


慌てて出て行こうとした時,

『ちょっと,お父さんっ!』

明るい可愛い声が聞こえて,思わず振り返る。

『お客さん怖がらせてどうするの!!』

すこしつりめの,パッチリとした大きなクリーム色の瞳。

気の強そうなオレンジのショートの髪の毛。

私よりもすこし高い背。

そんな女の子があの怖い人を睨みつけているだなんて,どうかしてる。

『怖がらせてるつもりはないんだが…』

あの怖い人は困り顔を作って,女の子に謝る。

なんだこの状況…?

よくみると,怖い人と女の子は目の辺りがよく似ていた。

『申し訳ありません!お客様!
店員の接客がなっていなくて…!』

女の子がハキハキとした口調で私に頭を下げる。

『どうぞこちらの席へ!』

『あ,ありがとうございますっ!』
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