瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
その言葉に,私の体はピクリと反応する。
私が弱みを握り,最終的には殺そうと思う相手。
『………なぜですか?』
なんとかそれだけ言葉を発する。
なんで,あんな最低なやつに,会いたいと思うの?
あいつのせいで,私の人生は変わり果ててしまったのに。
『私の母が,最近死んでしまって。
私の母,体が弱かったんですけど,あんなに長く生きれたことは,奇跡としか言いようがないんです。
それも全部,王様の配慮があったからなんです。
母は死ぬ間際,王様にあって,お礼をしたかったと言っていました。
私も,母を生きさせてくれた王様に,お礼をしたいと思ったんです。
それに,王様は私達庶民のこともしっかりと考えてくれていて,それについてもお礼がしたいと思ったんです。
王様は早朝に散歩等をしていると聞きましたから,もしかしたら,会えるんじゃないかなぁと…。
父も王様に報いたい気持ちもあって,この時間から始めることになったのです。』
少し寂しそうに微笑んで,シールさんはそう言い放った。
お腹の底で,ムカムカと気持ち悪い感情が湧き立つ。
あぁ,これは罪悪感と,憎しみだ。