瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
「さっき,話したでしょ?
国王に会いたいって言ってた…可愛いカフェで働く親子!」
「ええ!!」
エラが目を見開く。
「何か困ったことがあったら遠慮なくきてって言ってもらえたし…」
「いやいやいや!普通,見知らぬ女の子を思い出の詰まったお店で働かせないよ!」
「あの2人は優しいから大丈夫だよー。
それに,国王の情報を教えてあげたりすれば,快く働かせてもらえて,尚且つ住まわせてもらえると思うよ!」
エラは私の恩人だ。
それに,私と同じように捨てられて,愛情に飢えた子供だ。
そんな彼女を,なんとしても幸せにさせてあげたい。
私と同じような不幸な道は,歩ませない!!
「でも……」
「行くだけ行ってみようよ。ね?」
そう諭すように言うと,不安げな顔で頷いてくれた。
2人で小さなベッドで仮眠をとり,私のメイドの仕事が始まる前…つまり,4時半位にこっそり城外に出る。
ここを出る時,1つだった影が,2つになっていることに密かな幸せを感じる。
私達はどちらともなく走り出す。
これからの,未来のために
––––––私達の幸せのために…