瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。
メメントモリを願い続け
その後,まだひっそりと静まり返った街を,さっきは二人で歩いた道を一人で戻る。
それでも私は寂しくない。
この街に来た時のような不安は感じない。
もう,私は1人じゃないんだ。
その考えに,自分でびっくりする。
私はこの国に来てから,少しだけ変われたみたいだ。
自分の成長に安心しながら走り出すと,素早い風が私の傍を通り抜ける。
驚いて振り返ると,青みがかった黒色の髪の毛の男の子が走っていくのが見えた。
うーん?
なにか見覚えのある人だな?
首を傾げつつも,私はまた走り出す。
私にはこの後メイドの仕事があるし。
初仕事に遅れるなんて,たまったもんじゃないわ。