瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。

メメントモリを願い続け


その後,まだひっそりと静まり返った街を,さっきは二人で歩いた道を一人で戻る。

それでも私は寂しくない。

この街に来た時のような不安は感じない。

もう,私は1人じゃないんだ。

その考えに,自分でびっくりする。

私はこの国に来てから,少しだけ変われたみたいだ。

自分の成長に安心しながら走り出すと,素早い風が私の傍を通り抜ける。

驚いて振り返ると,青みがかった黒色の髪の毛の男の子が走っていくのが見えた。

うーん?
なにか見覚えのある人だな?

首を傾げつつも,私はまた走り出す。

私にはこの後メイドの仕事があるし。

初仕事に遅れるなんて,たまったもんじゃないわ。
< 99 / 169 >

この作品をシェア

pagetop