【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
真っ白い入浴剤からは石鹸の柔らかい香りがする。大きな浴槽の中で、チビひなたは眠そうに目を擦って、私の膝の上にちょこんと座る。
全然重くない。
今日参観日に行って気が付いた事だけど、チビひなたは同年代の子達よりほんの少しだけ小さい。
後ろからぎゅっと抱きしめると潰れてしまいそうな程、柔らかい。
こんな小さくて幼い子供を置いて居なくなってしまうというのは、お母さんはどんな気持ちだったのだろうか。それを考えるとやり切れない。
残された樹くんやチビひなただって切ない。けれど、残して先に逝ってしまう側の気持ちは?日に日に大きくなっていくチビひなたの成長をずっと見守って行きたかったのは、誰でもない母親である彼女だろう。
「デカひなた。」
「うん?」
「今日はありがとうな」
こちらを見上げたチビひなたの大きな黒目がジッと見つめる。
「お父さんが来てくれて、嬉しかった。初めてなんだ。学校行事にお父さんが来てくれるの」
「そっかそっか。それは良かったねぇ~」
「どうせお前が余計なお節介をしたんだろう。 おひとよしだもんな、デカひなた。
そんなんじゃあいつか悪い奴に騙されるぞ」
「悪かったわね。」
ふいっと前を向いて、チビひなたの声が小さくなる。