【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「でも、チビひなたは樹くんの事が大好きなんだと思うよ。
それにお父さんが一生懸命仕事を頑張ってるのも自分の為だって分かってる。
へへ、あんな小さな子がそれを理解しちゃってるのは少し悲しいけれどね。
しっかりしてるのは大好きなお父さんの為でしょう?優しくていい子だね、チビひなたは」

そう言ったら樹くんは眼を丸くして、私の顔をジーっと見つめた。

「君は本当に不思議な子だ。あんな陽向の気持ちに寄り添って、陽向もあんなに君に懐いて」

「それは、私がチビひなたの気持ちを世界で1番分かってあげられるからだと思います。
へへ、私実は4歳の時に両親を事故で亡くしているんですよ。
だからかなぁー、泣きたいけれど我慢しちゃう気持ちも分かるし、辛くっても自分の中に気持ちを押し込めちゃう事もある」

私の告白に焦ったように樹くんはこちらへ向き直り「すまない」と頭を下げた。

「何で樹くんが謝るんですかぁ?」

「俺は君の事情を何も知らずに…。
君が余りにも明るいもんだから、そんな過去があったなんて…」

「あ!でもぉ、誤解しないで下さいね!
1年前に亡くなっちゃったけれど、ずっと大好きなおばあちゃんが私を大切に育ててくれたんです。
小さい頃はおばあちゃんしか居ないって事をコンプレックスに思った時期もあるんですけど、きっちり愛情をかけてくれました。
泣いてばかりいる私に、泣いてばかり居たら幸せが逃げていくんだよって。
幸せだから笑うんじゃないって、笑うから幸せなんだって。そう言われて、笑顔だけは絶やさずに生きて来たつもりですッ」

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