【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
どうしてこんな事になってしまったというのだろうか。今日は樹くんと二人きりの初めてのデート。しかもそれは最初で最後かもしれないデート。
けれどこれは私が言い出した事だ。
前日まで悩みに悩んだ。
樹くんと二人きりのデートを楽しむか。
チビひなたも一緒に行こう、と誘うか。 私が言い出さなければ、樹くんから言ってくる事はないと思った。このデートは樹くんにとってあくまでも’借り’の一つであるから。
私の頭の中は、あの小さく柔らかいこの子が一人ぼっちであの広い家で勉強をしている姿ばかり映した。
ジョージさんの助言通りに私の1番楽しい方法っていうのは、3人で動物園に行く事だった。 だって大好きな樹くんと二人きりでも、チビひなたが気になってちゃあ楽しめそうもないんだもの。
「チビひなた。そのリュック可愛いね」
白い長そでシャツとデニム生地のお洒落なズボンを履いていた。けれどもチビひなたが両手に持っていたリュックは、クマさんの形の可愛らしいリュックだった。
「お父さんが買ってくれたんだ!
それに靴下も、クマさん柄だぞ?」
どこか誇らしげにそれをこちらへ見せる。
こういう所は普通の子供なんだけどなぁー…。
「へー、動物園楽しみだもんね?」
そう言ったらチビひなたは顔を真っ赤にさせて、ぷいっと横を向いてしまった。