【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

周りを見渡せば、家族連れやカップルばかり。

ペンギンの泳ぐ姿を青白い水槽の中で見つめていて、そこには毛色の違うペンギンが一羽すいすいと泳ぐ。

チビひなた、と声を掛けようとしたらチビひなたは樹くんの手を握り締めたまま私達とは違う場所を見つめていた。

その視線の先には、チビひなたと同じ位の年齢の男の子がお母さんとお父さんの間に挟まれて、仲の良さそうな姿。

真っ黒の瞳がその姿をジーと見つめている。 寂しくない訳がない。口に出さないだけで。やっぱり今日チビひなたを連れてきた事は正解だった。

けれど私はお母さんじゃない。代わりにもきっとなれない。


片方の空いている手をぎゅっと握りしめると、それは少しだけ汗ばんでいた。

驚いたように目を丸くして私を見上げるチビひなた。 ニッと笑顔を落とすと、ぎゅっと私の手を強く握りしめた。 その横で穏やかな微笑みを落とす樹くんは空いてる片方の手でチビひなたの頭を撫でた。

「チビひなた!あっち行こう!
珍しいペンギンを発見したんだよ!
あっちあっち!」

「おい、デカひなた手を引っ張るな!」

3人で手を繋いで動物園を回るのも悪くないかもね。
子供らしい笑顔を見せて生意気な口を叩く、この子の事を私は全然嫌いじゃない。

小さく汗ばんだ手がぎゅっと握り返してくれると、こんな嬉しい気持ちになる。 恋愛じゃないのにこんなにときめく気持ちになるのは初めてだった。

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