【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
おいおい、近づくな。
ウェイターだから、お客さんに着いてと言われたら無償で卓には着く。
今日もそんな感じだった。愛想よくニコニコと笑っているけれど、後ろから胸を鷲掴みにされてぶん殴りたくなる。
それでもニコニコ。かおるちゃんや仲の良いキャストだったらこんな時に助け船を出してくれるのだけど、女性で唯一のウェイターという事で私を快く思わないキャストも居るっちゃー居る。
指名嬢のジュリさんはそっぽを向いてドリンクを飲んでいた。 ちょっと~助けてよぉ~…さっきから胸揉まれてるじゃん…。
「社長~…止めて下さいよぉ~…。ジュリさんも見ていらっしゃいますし」全然見てねぇがな!ガン無視だがな!
「いいじゃんいいじゃん、ひなたちゃん」
このままじゃあシャツの中にまで手を入れられそうな勢いだ。
しかし現在お店は満卓で他のスタッフや店長に助けを求めようとしても、皆忙しそうでこちらを見てはくれない。
その時だった。
「汚い手で触るな」
頭から降って来た冷たい声に、変態社長の手から解放された。
上を見ると、社長の手を強く握り怒った表情を見せるスーツ姿の樹くんが立っていた。
「痛ッ、痛い!何だお前、離せ!」
「その子に触るなと言っている」
「て、店長!助けて!」