【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「いえ、こちらこそ騒ぎを起こして申し訳ありません。
約束通りお支払いはこちらのカードの方でお願いします。
それと、彼女を……」
「はいはい、分かっております!今後とも当店をよろしくお願いいたします!」
話が全然読めなかった。 スイートVIPを予約していたお客さんって樹くんだったの?!
何も言わずとも店長は全てを理解していたようで、私はあれよこれよとそのまま樹くんに手を引っ張られ店内を後にする。
その場で青ざめている社長と、驚き目を丸くしているかおるちゃんの姿が目に入った。 それでも有無を言わせずに樹くんは私を店内からあっという間に連れ出した。
「ちょちょっとどういう事ですかぁ?!
私今バイト中ですよぉ?!」
「大丈夫だ。店長に話はつけてある」
だから、何の!
「それに…荷物がマーメイドに」
「君の荷物は自宅に運ばせるように手配してある」
「一体何なんですかぁ?!」
暫く走った後に、樹くんが手を離す。 そして明らかに怒ったような顔色を私へ見せる。
…何、怒ってるの?私なんかした?
「君はいつもあんな風に客に体を触らせるのか?」
声も怒っている。眉間に深い皺を寄せて、大きな目を細めてじろりとこちらを睨む。
そんな怖い顔しないでよぉ~…。