【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「触らせる、と言うよりかは触ってくる人が結構居るんです…。女性のウェイターというのも珍しいですし。
それにほら、私って胸が大きいでしょう?
でも酔っ払いなので大した事じゃありませんよ。確かに今日のお客さんはしつこかったけれど」

「あいつは俺の下請けの会社の社長だ。
これを機に取引はなかった事にさせてもらう」

「何もそこまで~…可哀想じゃないですか~…。
それに胸を触らせる位減るもんじゃありませんし、そんな純粋な女でもありませんし~
全然気にしてませんよ」

その言葉に顔をしかめて、「少しは気にしろ!お人好しが!」と大きな声で怒鳴る。
そして再び私の手を引き始めた。
余りに大きな声に耳がキーンッとなった。いつもは人にデカい声って文句ばかり言う癖に。


それから樹くんは無言になってしまって、夜のネオンが光る街の下その大きな背中を見せるばかり。

手を引かれるままに連れて来られたのは、あの日始まりのホテル。初めて樹くんと結ばれたこの運命が始まったスイートルームだった。

あの夢のような出来事から、数か月。ここには再び訪れるとは思わなかった。
ホテルに着いても怒ったままの樹くんは無言で、バスルームに向かってお湯を溜める。

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